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『カゲノタイヨウ(仮)』 プロローグ
2008-11-17 Mon 07:00
いやはや、まさかの自作小説公開であります。

プロローグだけで20時間くらいですかね。タイトルもまだ「仮」が取れてませぬ。
(んなもん公開するなw)

文才のない人間が書く酷い自作小説でございます。一応推敲も手直しもしましたがまだまだ文章の繋がりがオカシイところがあると思います。平にご容赦をばっ

今回書いた小説はあっしの妄想の塊といってもいいでしょう。

そんな作品「カゲノタイヨウ(仮)」第1回目はプロローグとなります。横字で読みにくいかも知れませんが最後まで読んで頂けると嬉しく思います。

ではでは↓の続きをクリックすると始ります。

※非常に長いため携帯では全て表示されない場合があります。


タイトル『カゲノタイヨウ』(仮)
                   作・むんちゃ

 プロローグ
      
 「いってきます」
 俺は返事の返ってこない家のカギを閉め、カギが掛かっているか再確認をし、今日の空模様を伺いながら家を後にした。
 家のカギを持ち歩く様になったのはここ最近だけど、前からこんな生活をしていたんじゃないかって思う。それくらい自然な感じがする。
 俺は今まで何事もなく『普通の人』として、この一五年という歳月を生きてきたけど、これからも『普通に生活』して、『普通に勉強』し、『普通のサラリーマン』になって老いてゆく。
 何の夢もなく、ただ生きているそんな存在。世の中に干渉する気も無いし、人との関係を持つのもメンドウだと思っている。それでもこれから新しい生活が待っている。
 そう。今日からは高校生として生きて行かないといけない。実にメンドウだ。
 別にハルという季節が嫌いな訳じゃない。花粉は嫌いだけど。どちらかというとフユという季節よりかはましかな。寒いのはニガテだから。
 さて、そんな事を考えている場合じゃない。これから始るメンドウな生活に対して、どうやって生きていこうか考えよう。
 今日は入学式だけど俺の親は来ない。来ない方が気楽でいい。
 「グッドジョブ、親」
 思わず声に出てしまった。誰かに見られたり聞かれたりしていないだろうか。変に噂が広まって交番に通報されたり、最近お騒がせだったりする「変質者」や「全国指名手配犯」に間違われないだろうか。実に不安だ。
 とりあえず辺りを見回しながら学校へ向かおう。否。
 (怪しまれる…)
 大丈夫。今度は声に出ていない。いや、そういうことではなく。
 まずは学校に遅刻せず、無事に辿り着く事を考えて行動をしよう。
(うん。安全第一)
 学校までは徒歩でいけると下見の時には判断したけど、やっぱり自転車で登校しても問題なかったかも知れない。自転車で登校となれば一〇分と掛からずに登校出来ると思うが、ひとつだけ問題がある。そう、それは今まさに俺が歩いている急勾配な坂や急なカーブがあることだ。元々は大小の丘があった土地だったらしく、その丘を切開き道や線路を走らせて、今や人気のベットタウンで、近日中にも駅前で有名な総合デパートがオープンする予定だとか。他にも地下鉄が開通する予定地では昼夜を問わず工事が行なわれている真っ最中。この町の歴史についての情報は、先日ぶらぶらと近所周辺を歩いていた時に、駅前の大通りで見つけた図書館で、前衛的な作風をしたモニュメントの横に石碑があって、それを読んで知ったことなんだけど、それよりも理解不能なモニュメントは翌日の夢にまで出てくる程インパクトがあった。あれは一度見たら生涯忘れることはないだろう。思い出しただけでも、また今晩出てきそうだ。
 図書館のモニュメントやこの町の歴史はさておき、何故、この急勾配な坂を毎日自転車で通うのはあまり好ましくなかというと、確かに歩いて通うよりは断然早く学校に着くけど、学校に着くまでの安全面に不安があるからだ。ひとつは、駅前に繋がる大通りへの抜け道を、朝の時間帯は通勤の車が多く走るから。もうひとつは、俺が自転車に乗るのが下手だから。後者の不安が強すぎるために、俺は歩いて通学する事を決めた。
 一応。自転車には補助輪なしで乗れるけど、あんまり自転車には乗らなかったせいか、あんまり上手く乗れてない。実際、先日購入したカゴ付きの自転車で試し乗りしたら案の定だった。これ以上考える必要はないだろう。
 この気持ちを車で例えるなら、車の免許を取ってから、全く車に乗らないゴールドカードのペーパードライバーと、全く同じ心境なのかも知れない。俺は車の免許を持っていないが、『普通の人』なら持っている資格のひとつだ。高校を卒業するまでには一応。『普通自動車』の免許を取りたいとは思っている。勉強するのは構わないが、教習所の人と接するのが一番嫌だな。
 おっと、また考えている事が変わってしまっている。今は『通学』を考えている場合じゃない。『通学』に関しては一昨日の時点で結果が出ている。今は『学校』での生活を考えなければならない。さて、どうしたものか。
 「・・・ぁな?????ぃ!」
 「ど?か?な?い?でぇぇぇぇぇぇ???」
 ギィィィィィッィイィィィィッィィィィィィィィィィィィィ
 丁度、坂道の途中にあるT字路に差し掛かった時、横道の方から明らかにブレーキワイヤーが緩みきっている激しいブレーキ音を掻き鳴らしながら、一向に止まりそうのない暴走自転車が俺へと目掛けて突っ込んでくる。殆ど減速していない。それどころか途中からブレーキを諦めて、何を血迷ったのか勢い良くペダルを漕ぎだし加速して向かってくる。
(待て、何故眼を瞑る!目を開けて前を見ろ!)
 「あぶなっ」
 間一髪のところで暴走自転車を華麗に交し、振り返ってみると、勢い良く通過していった暴走自転車がゴミ集積所にストライク。本日は粗大ゴミの回収日だったらしく、廃棄してあったダブルベッドのマットに上手く突っ込んだみたいだ。ダブルベットのマットに自転車が突き刺さり、その衝撃の反動で立掛けてあったマットは道路側へと傾き、暴走自転車の主をヌリ●ベよろしくのボーディープレスで飲み込んだ。
 「……」
 念の為に安否確認を行なうべきか迷ったのは数瞬で、メンドウな事に巻き込まれるのは真っ平ゴメンと判断した。ここをいち早く立ち去るのが得策だろう。大丈夫あの人はテレビでよく観るスタントマンの様に、あのベットへと綺麗に突っ込んでいったのだから、死んではいないことは保証しておこう。きっと軽い脳震盪で倒れているだけに違いない。自転車の方はあのまま粗大ゴミになるだろうけど。
 しかし、気になる事がひとつある。あの人は何故、普通は「どいて」というところを「どかないで」と叫んだのだろうか。俺の聞き間違いかも知れない。いや、実はこれは夢なのかも知れない。普通に考えてあまりにも現実離れした不可解な行動と発言だ。そうか、まだ俺は起きてないのか。
(目を覚ませ俺!)
 思いっきり自分の頬を摘まんでみる。案の定「痛み」とうものがある。残念だ。どうやら夢ではないらしい。悪夢のような出来事に直面してしまったようだ。考えながら歩くということは非常に危険だということを身を持って体験してしまった。これでは『普通の人』ではなくなる。誰にも言わなければ『普通の人』のままでいられるかな。
 そうえいば、さっきの人は学制服を着ていたけど、学校に間に合うだろうか。俺には関係のないことだけど、一学期早々に遅刻とか欠席とかになったら大変だろうな。いきなり担任に怒られたり、生徒指導や生活指導の先生なんかに目を付けられて、学校へ行くのが気まずくなって、不良になってしまうんだろうな。あー嫌だ嫌だ。考えただけでも吐き気がする。今日は入学式だっていうのに朝から鬱全開だな。まいった。
                    ★
 結局、学校に着くまでに全く何も考えられなかった。いや、逆に全く別のことを色々考えてしまった。実に情けない。
 さて、これから三年間通う事になる、ここ「私立月観ヶ丘学園高等部」この学園は初等、中等、高等まで何事も無ければエスカレーター方式で上がれるとあって、この近辺では一、二位を争う人気の志望校らしく、進学クラスやスポーツクラスなんかも設けてあり、文武両道を兼ね備えた学園ってところだ。生徒数はかなり多いものの、これといって有名になるような出来事は今まで殆どなかったらしい。それもそのはず、この私立学園はまだ創設十年弱の新米学園で、まだまだ他の学校との力の差があるようだ。
 で、本来、俺はここの学園ではなく、前に住んでいたところから通える一般県立高校に通っているはずだった。でも、俺はその県立高校ではなく、この学園に高等部から通うことになった。
 今は思い返す場合じゃないので、とりあえずクラス割り表が張り出されているところに行ってみよう。
 学園の正門を抜けると大きな一本の桜の木が向かえてくれた。今年は全国的に例年よりも早いハルの訪れで、若干ここの桜も花を散らせて新芽が目立っているようにも感じる。一、二年生の通う校舎は中庭の先にあるため、正門から登校するよりも裏門から入った方が早いって人もいるだろう。俺は正門の方が登校し易いからコッチがメインになると思う。電車通学の人は裏門からの登校が多いと思う。三年生は正門の真ん前にあるこの校舎。無駄に四階建てだけど、これって構造に問題ないのかな。
 校舎を眺めながら良く手入れされた中庭までやってくると、クラス割り表の前には新入生ばかりだけではなく、先生や保護者も含めて沢山の人が集まっている。
 約四、五〇人くらいの集団からちょっと離れたところまで歩みより、クラス割り表の中から俺の名前を探す事にした。視力が二.〇なのでコレくらいの距離なら名前がはっきりと判る。これで俺の名前が載っていなかったら、引っ越して来たところから良く似た名前の別の地域へと、間違えたやってきたことになる。そうなったら間違いなく『普通の人』ではなくなる。今まで順調に過ごして来ただけに、すごく不安だ。
 落ち着け。高校からの編入合格発表があった時と、全く同じ名前を探せばいいんだ。大丈夫。きっとあるはずだ。無いと困るが無い訳がない!
 (カゲノ…カゲノ…)
 ふぅ。とりあえず「1‐A」には俺の名前はなかったな。二〇回見直した。間違いない。
 「普通の人」なら「1‐A」のクラスに決まっているんだろうな。「1‐A」のクラス割になった人が実に羨ましい。俺だって嫉妬くらいは人並みにするさ。
 よし、次のクラスに名前があるはずだ。
                    ★
 クラス割り表の前に立って軽く二〇分。
 それくらいの時間は経っただろうか、周りに居た新入生は自分の名前を見つけてはこの場を去っていき、これからクラス割り表を見に来る新入生がどんどん入れ替わっていく。
 (オーマイガッ!)
 俺も早く名前を見つけて、教室へと駒を進めなければいけない状況なのに、
 『名前が見つからない』
 名前が無いという不安と恐怖が俺を襲ってくるため、なかなか確認が進まない。
 「1‐A」から順に探してきて、残るは「1‐G」と「1‐H」の2クラス。なんでこんなにクラスが多いんだ。探す手間を考えて、入学した生徒の全ての家を対象に通知で知らせてくれれば、俺みたいな人がこんなに不安や恐怖に襲われることもなかったのに。
 あと2クラスしか残ってないけど、もし確認して無かったら俺の人生をリセットしよう。
 さて、Gクラスのクラス割り表は…七度目の正直。
 (カゲノ…カゲノ…)
 「あったー!]
 不覚にもガッツポーズを取ってしまった。何人かに見られてしまった。今日の俺は変だ。 『普通の人』じゃない。
 しかも、「あったー」なんて叫ぶ始末。ハズカシ過ぎる。影野家の汚点。人間の恥。学園生活初日にて、俺の人生は終った。そう終ったのだ。もう家に帰ろう。明日からやり直せるか全く分からないけど、今日の俺には戦うための残機がない。家に帰ってから『体調不良で欠席します』って電話を入れよう。
 フラフラする足取りで、半刻前に来た正門の方へと歩き出し、これから初登校してくる新入生の流れに逆らいながら正門まで辿り着くと、ひとりの若い女先生が不安そうな目でこちらを見ているのが分かる。
 案の定、声を掛けられてしまった。嗚呼メンドウだ。
 「おはよう。新入生クン」
 ちょっと不安そうな顔で、その優しい声は俺にとってどれだけ痛いダメージか、この人には分からないんだろうな。構ってくれなくれいいのに。
 「あ、おはよう…ございます」
 「新入生クン。教室はコッチじゃないわ、中庭の先に向かうのが正解よ」
 シャンとした姿勢で、左人差し指を一、二年生の校舎に向け、俺に『戻れ』と警告する若い女先生。セミロングの黒髪が桜色のスーツに良く似合う。けれど顔付きがやや童顔にも見えるので、きっとこの先生は生徒からアマちゃん先生として見られているんだろうな。可哀想に。授業中も年中崩壊していて、まともに授業が進まない事も多く、担任になるのが夢だけど保護者や理事長が許してくれないに違いない。俺の中学校時代の環境なら間違いなくこの先生は一ヶ月で辞職しているな。
 「行く方向が分かったら教室に向かおうね、もう少ししたら入学式も始るから、教室で担任の先生が来るまで楽しみに待っててね、みんなの担任になる先生や授業を受け持つ先生は、みんな優しい先生ばっかりだよ、分からない事があったらなんでも聞いてね」
 「ありがとうございます、でも、僕、少し体調が良くなくて」
 「あら、やっぱり?なんか顔色悪い感じだし、入学式が始るまでは、保健室で休む方がいいかな?」
 「あ、いえ、お構いなく、ひとりでも帰えれますから」
 「ん?でも、折角の初登校だし、先生が保健室まで連れていってあげるわね」
 正直、放って置いて欲しいが、この若い女先生は俺の腕をガッチリ掴んでいて放しそうにない。ここで無理に振りほどいたら、先生が転んで怪我をするかもしれないし、周りにいる他の先生が俺を不良と意識してしまうかもしれない。嗚呼、参った。実に参った。どうすればいいんだ。あまり考えている時間はない。若い女先生は、近くに居た別の先生に話を付け始めている。どうしよう。
 「つぃたぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 「はぁ危なかった? まさか初登校でいきなり遅刻になりそうだったよ?」
 いきなりの大声に、彼女は周りからの注目を集めたが、そんな目線を気にも止めず、乱れすぎた服装を整えていた。そして一呼吸。
 「日向井 南。ただいま学校に到着しました!」
 「先生方、おはよう御座います!」
 数秒間、校門周りに居た人達は足を止めて呆気に取られていたが、ひとりの先生が彼女に近寄って、声を掛けると同時に、周りの時間がまた動き出したような気がした。
 「先生。僕よりも、まずは彼女の方を先に保健室へ運ぶ方がいいんじゃないでしょうか」
 思い出したくもないが、彼女は忘れもしない先ほどの暴走自転車の犯人。どうやら生きていたようだ。擦り傷が痛そうに見えるがアレだけ元気なら放置して良かったと心から思える。学制服を着ていたからまさかとは思っていたが、本当に同じ学校の生徒で新入生だったとは頭が痛い。髪の色もココの校則違反なんじゃないかって思う髪の色。制服は新入生とは思えないほどに汚れが酷く、スカートには長いスリットが入っていて、健康的な美脚を露わにしている。
 あ?いけない。何を考えているんだ俺は、それよりも早くこの先生に今日は欠席することを伝えないと。
 「あの、先生? 僕帰りたいんですけど」
 「あ、えっと、ちょっと待っててね」
 と言い残し、俺の腕を掴んでいた手を放して、若い女先生は彼女の方へと駆け寄っていった。これはチャンス。このまま帰ればいいな。きっと今なら居なくなっても大丈夫だろう。帰って学校に休むと連絡すれば無事に帰れたってことになるだろうし。良し帰ろう。
 「あー待ちなさい。影野君。勝手に帰ろうとしないの!」
 (えっ…俺の名前?)
 突然呼ばれてビックリしている間に、若い女先生は、また俺の腕をガッチリと掴まえて、保健室のある三年生の校舎の方へと連行されることになった。勿論。もう一方の手に掴まれているのは、先ほど正門前でお騒がせになった女の子を捕まえている。俺の視線に感じたのかコッチを見て、わざとらしくVサインを送ってくる。俺はコイツとは関わりたくないので、Vサインを無視して先生に質問をした。
 「先生、先ほど名前を呼びませんでした?」
 「ええ、呼んだわよ影野君」
 あれ、間違いじゃなかった。なんで俺の名前をこの人は知っているんだろう。
 「そんな、不思議そうな顔をしないでよ」
 「一応、これでも私はあなた達の担任よ。佐倉由紀っていいます、よろしくね」
 「えっ担任の先生ですか、すいません、まさか担任の先生だったとは…思ってもいませんでした」
 「いいのよ。気にしないで、まだ新入生のみんなには、担任の先生が誰だか発表されていないんだし、知らなくて当然でしょ」
 「まぁ、そうですけど」
 見ため通りというか、この先生は生徒からの人気は結構あるんだろうな。短い時間でこんなに親近感を感じるし、でも、授業崩壊するイメージは変わらない。
 「ねえ、先生」
 「はい? 何かしら日向井さん」
 「あれ、私の名前もワレているのか?」
 何故そこで照れる…
 「担任の先生ってことは、私はどこのクラスなんですか? ほら、私って来てまもなく、こうやって保健室に連れていかれているので、わからないんですけど…」
 空いた手で頭を撫でながら、ちょっと恥ずかしさと期待に溢れた眼差しで、日向井は佐倉先生に質問した。
 「日向井さんも、影野君と同じ、1-Gのクラスよ、よろしくね」
 「はい。ユキちゃん先生」
 はあ?…今なんていった…コイツと俺が同じクラス?…冗談じゃない!
 「日向井さん。先生を名前で呼ばないのっ」
 (噂には聞いていたけど予想以上みたいね…)
 「あはははっ、ごめんなさーい」
 反省という文字からは、全く無縁と感じる子ではあるが、間違ったら謝るということは出来るみたいだ。でも、俺と同じクラスメートというのは予想外もいいところ。クラス替えとか早く来ないかな。いや、むしろ卒業式はまだかな。
 「ねえねえ君。ねえってば、聞こえてますかー生きていたら返事をくださーい。もし…」
 「ちゃんと聞こえてます。そんなに大声で呼ばないでください。あと、その手鏡で太陽の光を反射させないで貰えませんか、すごく眩しいから…」
 「お、反応あり。ねえ君とは朝に会ったよね? あたしの立てたフラグを思いっきりへし折ったよね? どうして? 何故?」
 何故って答える必要性はないだろ。フラグってなんだ…よく分からない事までいってるが、本当に大丈夫かこの子。
 「日向井さんと、影野君は知り合いだったの? 日向井さんは初等部からこの学園の生徒さんということは知っていたけど、影野君は確か高等部からの編入よね」
 「先生。僕は日向井さんとは何の関係もありません。今朝の通学中に見かけたのは、本当ですけど…」
 「うわ。ちょっと?私の話を無視しないで答えてよ!」
 「…」
 「日向井さんは元気ね…保健室はもうすぐだけど、保健室では静かにね」
 「あ、はい」
 こいつ初等部の頃からココに通ってるのかよ…よく追い出されないな…
 「ユキちゃん先生。影野君の態度は明らかに私の意見を無視しようとしています! これは明らかにイジメです!」
 「日向井さん! さっき注意したばかりですよ! 名前で呼ばないのっ」
 佐倉先生も呆れた生徒を受け持ったことに気付いてしまったようで、大きな溜息をひとつ付いていた。にしても迂闊だった。こいつは凄くメンドウなヤツだな。俺が「普通の人」として生活を送る最大の障害になりそうだ…
 「いや、さっきのは無視していた訳じゃないんだ。その…なんていったらいいか分からなくて…色々考えていたんだ」
 「なんだ、そうだったの? それならそうと早く言ってくれなきゃ分かんないよ。で、どうしてフラグを折ったの?」
 「え、えっと…フラグってなんのこと? それが今ひとつわからなくて…」
 「フラグはフラグだよ。ほらゲームやアニメ、漫画なんかでさ
 『この戦争が終ったら、俺と結婚してくれないか』
 『ええ、必ず生きて帰って来てね…』
 っていう、一連の流れが出てきたら『死●フラグ』が完全に経ってるでしょ。たまに「噛ませ犬」みたいなキャラクタが言うと、大体はフラグクラッシャーになったりするんだけど、やっぱりフラグを立てたらクラッシュせずにそのまま読者や視聴者の思うようになるのがベターだよね。フラグクラッシャーが許されるのは、敵キャラクタでその作品の中で名言というか…迷言なんを良く吐いて、憎めないキャラクタとして位置付けされないと駄目だよね。最近はフラグにも色んな種類があって、『ヤ●デレフラグ』なんかも浸透してきたよね。あ、因みに私は『ヤン●レ』が好きじゃなくて、そっち系の話になりそうだったり、前情報で分かったらその作品にはノータッチにしているの。あーごめん。少し話が脱線したけど、分かった?」
 「…」
 「いや、全く。さっぱり」
 「あれ? じゃーもう…」
 「説明は結構です」
 あのまま一方的なマシンガントークをされたら堪ったもんじゃない…既に俺の残機はクラス割り表の時に無くなっている。
 結構強めに言ったのが効いたのか、保健室に付くまでは口を開かなかった。時間としてカップラーメンにお湯を注いで三分経っていないくらいの時間だけど、ずっと喋りっぱなしよりかは静かになって、気分的にも少しは楽になった気がする。
                    ★
 「失礼します」
 佐倉先生が保健室の前で扉を軽くノックし、一言挨拶をしてから扉を開けると保健室独特の匂いが鼻をつく。俺は別になんともないが、日向井は手当てが必要なのは明らか。いや、保健室といわず病院の隔離施設に送り込んだ方が正解だったかも知れない。
 「あら、ユキっぺ。そろそろ入学式が始る時間じゃなかった?」
 「{ちょっと! 生徒の前では名前で呼ばないでよ!}」
 「{ごめん。ごめん}」
 この保健の先生もかなりアウトな気がする…
 「おっほん。古河島先生。体調の悪い生徒と怪我をした生徒を連れてきたので、手当てをお願いします。私は一度職員室に戻ります」
 「はい、はーい」
 一度ジト目で膨れてみせた佐倉先生だが、その視線には全く気にしていない古河島先生は日向井の手当てするために薬品を棚から取り出している。
 「ふたりは入学式が始るまで、ここで待機していてね。後で迎えに来るから」
 「じゃ、後は任せて、さ・く・ら・せ・んせ・い」
 古河島先生はウィンクをひとつ飛ばして見せたが、佐倉先生は溜息をひとつ付いて保健室を後にした。なんだか俺は入学式早々に、問題を起こしてしまった生徒のようじゃないか。この処遇の元凶になったのは全て、今から手当てを受ける日向井だ。間違いない。
 「じゃーまずは女の子から、コッチに座って」
 ポンポンっと丸椅子を叩きながら治療道具から消毒液を取り出している。
 「あなたのお名前は?」
 「名前は、日向井 南っていいます。クラスは1-Gです。さっきユキちゃんから聞きました」
 「まさか入学式の朝に先週買ったばかりの自転車を大破させるとは思ってもいませんでした。えへへ」
 (「えへへ」じゃねー こっちは死ぬかと思ったんだぞ! 謝れ! 俺に謝れ!)
 「古河島先生は、ユキちゃんと仲いいんですか?」
 (なんだー ユキっぺはもう生徒に名前で呼ばれてるのかー 早いな? しかもこの子がユキっぺの受け持つ生徒とはね。頑張れユキッペ! 新入生に負けるなっ)
 「ええ、仲いいわよー 学生時代からの付き合いで、たまたまココの学園でも一緒になって、最近じゃ良く呑みに行く事も多くなったわね」
 「で、アナタが噂に良く聞く日向井 南ちゃんか? 知ってるよー この学園じゃちょっとした有名人だよねー そうかそうか、遂に噂の本人が高等部に入って来たか。こりゃ今年の高等部は大変な事になるのかな?」
 ちょっと前まで中等部だった日向井の噂が高等部まで届いているとなると、今までどんな悪さをして来たんだ…
 「いや? 私ってばそんなに名前が知られているのかな? 良くは分からないけど、初等部からココに在籍してるからかな?」
 いや、その考えは絶対に違うと思う…阿呆の子とはこの事だな。今日初めてあった俺でさえ、日向井の変人っぷりを見れば注目されて当然。間違いなくこの学園ではトップクラスの要注意人物に指定されているだろう。普段はどんな生活をしているやら、きっと酷い生活を毎日送っているに違いない。古河島先生も初対面の相手のはずなのに、随分フレンドリーに話してる。話しながらもちゃんとテキパキと仕事をしているのは流石というか…適当に消毒しているだけにも見えなくはない…きっと気のせいだろう。
 「南ちゃん。ずいぶん派手に転んだのね。どいう転び方したらこうなるのか気にはなるけど、消毒だけで大丈夫そうね。他に痛いところはあるかしら?」
 「大丈夫です。先生の応急処置は完璧でした! 保健の先生って、やっぱり白衣の天使なんですね」
 「お世辞をありがとう。嬉しいわ」
 「さて、お嬢様の手当ては終ったけど、その服で入学式に出るのは厳しいわね。変えの制服なんてないから、無理して入学式に出ることは無いわよ。良かったら先生の話相手になってくれると嬉しいな。お茶も出すわよ」
 何を言っているんだこの先生は…生徒にサボることを推薦している…でも、確かに汚れた制服で入学式に出るのは辛いよな。『普通の人』ならね。
 「さて、君はどこが悪いのかな?」
 「え?」
 いけない。いけない。俺は別にどこも悪くないけど、顔色が悪いってことで保健室に来たんだっけ忘れてた。
 「まずは、君のお名前を聞こう」
 「はい。影野 太陽です。日向井さんと同じ1-Gクラスです」
 「カゲノ?」
 「はい…影野です」
 何故か俺の名前を聞いて、考え込んでしまう古河島先生。何か合点に当たったのか俺に質問をしてきた。
 「あれ?もしかして、アナタの身内にお姉さんとかいない? とっても明るくて、超が付くほどのブラ●ンお姉さん」
 「ブ、ブ●コンか分かりませんが、姉はひとりいます」
 「おお、なんと! 影野君はブラ●ンフラグを持っているんですか! ホンモノに会うのは初めて…感動すら覚えるよ」
 そう答えると、古河島先生は片唇を器用に釣り上げ、得意げの笑みを浮かべた。もうひとりは相手にするだけメンドウだ。放置に撤して害を減らそう。
 「ずばり。お姉さんの名前を当ててあげよう」
 ピンと指を立てて古河島先生はいう。
 「おお! 古河島先生はアレとかが見える人なんですか! 凄いです! 苗字からすると、家柄が朝廷とかに仕えた神官辺りだったりするんじゃないですか?」
 目をランランとさせて、勢いよく椅子から立ち上がる日向井。本当に阿呆の子だ。
 「あはははは。南ちゃんはホント面白い子ね。でも残念。ウチの家系は全くそういうのとは無縁なところね」
 暫らくお腹を抱えて笑っていた古河島先生を他所に、日向井はガックリと肩を落とし、座っていた椅子に腰を落とした。非常に残念そうなのが伺える。そこまで悔しい事とは思えないが、日向井の考えている事は理解し難いことばかりだ。今朝からまた数時間も経っていないのに、もう一週間くらいの体力を使ったようにも感じる。
 「で、太陽君のお姉さんの名前なんだけど、恭子って名前でしょ?」
 笑いが収まったのか。先生が俺の姉の名前を答えた。
 「はい。そうですけど…どうしてわかったんですか?」
 「わぁ凄い! 正解!」
 阿呆の子がまた息を吹き返したみたいだけど、ここは無視。
 「影野って苗字は珍しいでしょ? それに今の質問でちゃんとブラ●ンって言葉に反応したからね。恭子は弟君が大好きだから、一緒にいると私が聴きたくなくても勝手に話しに出てくるの。そんな話を聴いていたから分かっただけ」
 「そ、そうでしたか。古河島先生は僕の姉と知り合いでしたか…だらしない姉がお世話になってます」
 「いやいや、いつも世話になってるのは、どちらかというと私や後輩の方よ」
 「え、迷惑とか掛けていませんか? どちらかというと周りに迷惑を掛けているんじゃないかって思っていたんですけど」
 「恭子はみんなからのカリスマ的存在よ。信頼も厚いから色んな人から頼りにされているわ。でも、ブ●コンって事を知っている人は少ない方なんだけどね」
 「恭子の弟君なら、いつでも大歓迎。教室で嫌な事や退屈したら迷わず保健室にいらっしゃい。先生が匿って上げるから」
 迂闊に返事できない事を軽くいいのけてしまうこの先生は、保健医というか教員としてどうなんだろうか。姉の影響? 影響なのか? そう考えるとこの先生は滅茶苦茶駄目な気がしてきた…
 まさか、こんな所で姉の名前が出てくるとは正直思ってもいなかったけど、そういえばこの先生は保健医としては、服装がちょっと「派手」なんじゃないか。最初は白衣しか見ていなかったけど、よく見ると白衣の下は黒のコルセットに黒のレザーブーツ。これは保険医としてはマズイ格好だと思う。衛生的にも非常に悪そうだし、よく理事長さんにお咎めを貰わす働けてるな。待て待て、ちょっと話が脱線し過ぎてる。このメンドウな場から少し距離を置いて一度頭を冷やそう。今はまた日向井が先生に変な質問をしている。どうでもいいような下らない質問だ。古河島先生も適当に遇《あしら》ってしまえばいいのに。面白半分にその質問に乗って答えてる。お茶まで用意し始めたよ…まあ俺には関係ないや。
 「あのーすいません。古河島先生。僕はちょっと体調が良くないみたいなので、そっちで横になっていてもいいですか?」
 清潔な白いベットが並ぶ方を指差し一言断りを入れる。
 バツが悪そうに、古河島先生は、こっちに視線を向けてきた。
 「ゴメン。ゴメン。うん。そっちの空いてるベットを使って頂戴。弟君。もう少ししたら佐倉先生が来ると思うけど、追い返しておくから、もし本当にダメそうなら私から恭子に連絡入れて迎えに来てもらおうか?」
 「はい! 古河島先生ヨロシクお願いします!」
 「あははっ そうね。南ちゃんも呼んだ方がいいかもね」
 (日向井…お前が返事をするな…この先生も良く笑うな…)
 「いえ、姉は呼ばなくても大丈夫です。仕事中だと思いますし、少し休めば楽になると思うので…」
 「そう? もしダメそうだったらいつでもいってね」
 「はい。ご迷惑お掛けします」
 とりあえず、お礼も言って清潔感のあるベットに横になり一休みしよう。窓から入ってくる春の柔らかい風が今の俺には優しすぎる。入学式早々にこんな体験をするなんて、もう『普通の人』には戻れない。嗚呼、サヨウナラ普通の日々よ。

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